阿寒 初秋の森

2022年09月10日

阿寒は、北海道の中でももっとも原生的な森林が残っていると言うことができる地域です。大径木・高蓄積の森にこれだけ近くアクセス(登山道から、ときに車道から) できる箇所はほかにありません。火山や湖の存在がつくりだす多様さも魅力です。

これまでも何回か訪れたことがあるのですが、仕事上で、より詳しく勉強する必要があり、9月の休日、歩きにでかけました。

雌阿寒の山麓

8時に雌阿寒温泉の登山口に到着。快晴の天気、駐車場はすでに満杯に近い混雑で、さらに続々とくるまが入ってくる状況。山頂を目指す方がほとんどと思われますが、自分は何箇所か回るつもりです。

登山口。標高は700m。「アカエゾマツ展示林」の看板。

すぐに見事なアカエゾマツ林が見られます。先ほどの看板によれば、直径50ー60cmのもので樹齢300ー350年に達するとのこと。樹高は25mほど。

倒木、枯死木。単木的に見られました。

岩の上で更新。

この尾根ではトドマツは多くありませんでしたが、更新している箇所も。なお、この山の(今回歩いているのとは反対側の)東斜面は、アカエゾマツではなく、むしろトドマツ林が優占しているのだそうです。

アカエゾマツと混交。

林冠層に達する広葉樹は登山口付近に多く、次第に少なくなりました。

ナナカマド。

コシアブラ、ハリギリ。

ケヤマハンノキ。

シナノキ、オガラバナ。

根系が露出する道。一部急登もありますが、歩きやすい道が続きます。

コマユミ、ツリバナ。

ハイイヌツゲ、ゴゼンタチバナ。

ツツジ科の樹種が豊富。ハクサンシャクナゲ。

イソツツジ、ミヤマホツツジ、ハナヒリノキ。

オオバスノキ、ウスノキ。

リョウブ。

標高900m、2合目付近の岩礫地の斜面。ここも見事な林。直径50cm、樹高20mを超える個体をなお見ることができます。

ハイマツ。この付近で目立つようになりました。この山ではダケカンバ帯が欠けており(確かにダケカンバを見かけません)、あともう少しでハイマツ帯に移行します。

アカエゾマツの稚樹が林床を埋め尽くしていました。

マウンド上。樹高30cm程度ですが、近寄ると立派な森林のようにも見えます。

登山客が後からもたくさん続いてきます。山頂までの標高差はなお600m。森林見学の自分は、森林限界手前のここで引き返しました。

林縁ではアカエゾマツが結実。今年は全道的に大豊作になったようです。


雌阿寒温泉ーオンネトー

山頂に向かわない代わりに、別のコースを歩きます。雌阿寒温泉に戻り、そこから南のオンネトーにつながる山麓の歩道に入りました。うってかわって、誰もいない静かな散策です。

ここも、すばらしいアカエゾマツの林が広がっています。

引き続き、林床の優占種はハクサンシャクナゲ。

ゴゼンタチバナ。標高が高いところより、実の付きがよく見られました。

コケ上でアカエゾマツが更新。

エゾマツとトドマツも更新。

緩やかな下り道。次第に広葉樹が増えていく印象でした。 

ハウチワカエデ、ミネカエデ。

オガラバナ。

ダケカンバ、シラカンバ。

ケヤマハンノキ、オヒョウ。

シウリザクラ。

ナナカマド、いち早い紅葉が見られました。

アズキナシ。

シナノキ。

コシアブラ、ハリギリ。

ツルアジサイ、ミヤママタタビ。

イチイ。

1時間ほどでオンネトーに到達。標高700mから緩やかに70mだけ下ってきました。歩道では1人だけしか出会いませんでしたが、キャンプ場はたくさんの人。


オンネトーを一周

ここからオンネトーの西岸をたどり、展望台を経る歩道に入りました。

ヤチダモ、カツラ。

登り道に入ると、すっかり広葉樹林。

針葉樹はエゾマツが時折出現。

ミズナラ、シナノキ。

イタヤカエデ。

ハウチワカエデ、ミネカエデ。結実個体が多数。

シウリザクラ、ナナカマド。

ウダイカンバ、ダケカンバ。

ひと汗かいて、標高760mの展望台。ここは反対方向から登ってくる一般観光客が多数。雌阿寒岳・阿寒富士とオンネトーの眺望。

ハリギリ、タラノキ。

ドロノキ、カワヤナギ。

フッキソウ、トリカブト、ハンゴンソウ。

下ったところには湖畔からの展望台

ここからは車道を歩いて雌阿寒温泉の駐車場へ戻りました。1周3時間でした。


雄阿寒の山麓

(これは約10日前。用務のある朝、1時間ほどの散策)

前日は大雨だったのですが、止んでくれました。山頂方面まで眺められました。

標高410mから、阿寒湖に沿って歩きます。

ここも優占種はアカエゾマツ。直径80cmクラスのものも。

太郎湖への流路。水量が豊富です。

ドロノキ、ケヤマハンノキ。

ダケカンバ。岩の上で更新。雄阿寒岳では、山頂に至るまで出現するようです。

トドマツも多く見られました。雌阿寒岳西斜面では見られなかった一斉林上の林。

太郎湖。

林床の優占種はハクサンシャクナゲ。

トドマツの更新が豊富。

一方で、枯死・倒木も多く見られました。

次郎湖。標高440mなので、登山口からほとんど登っていません。森林限界は1,000mなのでまだまだ森林が続くのですが、今日はここまでで引き返しました。

時折広葉樹が混交。

イタヤカエデ。

ハウチワカエデ、ヤマモミジ。

シウリザクラ。

エゾヤマザクラ、アズキナシ。

ハリギリ、シナノキ。

リョウブ、ハナヒリノキ。

コマユミ、ツルアジサイ。

起点に戻りました。ちょうど始発の遊覧船が通っていく時刻。


周辺いくらか

雌阿寒温泉に戻ったあとは、くるまで行ける範囲で、標高の異なる何箇所かを回りました。 

標高680m 望湖台

雄阿寒岳とペンケトーの眺め。

標高としてはさほど高くありませんが、山頂に近いためかダケカンバ帯。なお、雄阿寒岳にはダケカンバ帯が分布する(800ー1,000m)のに対して、雌阿寒岳では針葉樹帯が直接ハイマツ帯に移行するのだそうです。林床は深いチシマザサ。

標高520m

ここは林床がクマイザサのアカエゾマツ林。シカの食害が顕著。

標高500m

湿地性のアカエゾマツ林。上層木の直径は30cmほど。

疎林の中にケヤマハンノキが混交。

標高440m 阿寒湖畔

新しくなったビジターセンターを覗いた後、湖畔の歩道を散策。

ここは広葉樹林。今日初出の樹種がいくつか。オニグルミ。

カツラ。

キタコブシ、アズキナシ。

ハリギリ、ミズナラ。

サンザシ。移入種ですが、薬用に使われたのでしょうか。

標高380m

阿寒川に沿って標高が下がった個所。ここは見事なミズナラ林。

ハルニレ。樹冠下にはトドマツが更新していました。

一日、多様な林を見ることができました。もう少し勉強する必要があるので、また季節を変えて訪れる予定です。